MENU

もう2年、この恋に囚われていた私へ。職場の片思いを「卒業」する心の処方箋

「もう2年…」

会社のデスクに座り、パソコン画面の向こうで談笑する先輩の背中を見るたび、私の胸は締め付けられる。あの優しい笑顔、困っているときにそっと差し伸べられる手、誰にでも平等な気遣い。そのすべてが、私にとっては特別な意味を持っていた。いや、持たせていたのかもしれない。

初めて彼に恋心を抱いたあの日から、もう2年が経った。この長い時間、私はどれだけ彼の言葉を深読みし、些細な視線に一喜一憂してきただろう。会議中に目が合えば「もしかして?」と期待し、プライベートな話が出れば「私には関係ないんだ…」と胸がえぐられる。毎日、同じフロアで顔を合わせるたびに、心臓が跳ね上がり、呼吸が浅くなる。仕事に集中しようとすればするほど、彼の存在が私の意識を支配していく。

一度だけ、勇気を出して個人的な食事に誘ったことがある。彼は「いいよ」と快く応じてくれた。その夜は、夢見心地だった。もしかしたら、ここから何かが始まるのかもしれない。しかし、実際に食事に行くと、彼はあくまで「優しい先輩」だった。仕事の話、共通の趣味の話。私の心は期待で膨らんでいたのに、彼の言葉はどこまでも平坦で、私に向けられた特別な感情はそこにはなかった。帰り道、夜風がやけに冷たく感じられたのを覚えている。「ああ、やっぱり…」心の奥底で、何かが音を立てて崩れていくのを感じた。

それからも、彼の態度は変わらない。相変わらず、私にも他の同僚にも分け隔てなく優しい。その優しさが、私にとっては一番の毒だった。「彼は私の気持ちに気づいていないのか? それとも、気づいているけど何も言わないだけなのか?」そんな疑問が、頭の中をぐるぐると回り続ける。

「もうダメかもしれない…」

週末、一人で過ごす部屋で、天井を見上げながら呟いた。この2年間、どれだけの時間とエネルギーを、報われないこの恋に費やしてきたのだろう。友人との会話も上の空になりがちで、新しい趣味を始める気力もない。鏡に映る自分の顔は、以前よりずっと疲れて見えた。このままでは、仕事もプライベートも、何もかもが中途半端になってしまう。

「なぜ私だけが、こんなに苦しい思いをしているんだろう…」

そんな自己憐憫に浸るたび、自己嫌悪の波が押し寄せる。彼を好きになったこと自体が間違いだったのだろうか。いや、好きになった気持ちに嘘はない。ただ、この「好き」という感情が、私をがんじがらめにして、身動きが取れなくしているのだ。まるで、砂漠で枯れ木に水をやり続けるようなもの。どれだけ愛情を注いでも、その木は決して芽吹くことはない。それどころか、貴重な水(私の時間、エネルギー、感情)がただただ砂に吸い込まれていくだけだ。

もう、このループから抜け出したい。心の平穏を取り戻したい。そう強く願うようになった。諦めることは、決して敗北ではない。それは、出口の見えない迷路から脱出し、新しい道を切り開くための、最も勇気ある決断なのだ。この報われない恋から自分を解放し、新しい自分として輝くために、今こそ一歩を踏み出す時が来た。