職場の彼から「性格が似てると思う」と言われ、MBTIを聞かれて調べてみたら相性の良いタイプ。舞い上がった私は「これは運命かも！」と心が躍りました。しかし、過去に「相性抜群！」と盛り上がり、結局玉砕した苦い経験がフラッシュバック。「また同じ失敗を繰り返すのでは…」「この高揚感、ただの幻想なんじゃないかしら…」「舞い上がっているのは私だけ？彼にとっては、ただの雑談だったのかも…」そんな心の声が、私の胸を締め付けます。MBTIという強力なツールを手に入れたのに、どう使えばいいか分からない。ただ、その診断結果を眺めているだけの自分が、情けなく思えました。MBTIは自己理解や他者理解を深める素晴らしいツールですが、恋愛において相性の良さに過度に期待しすぎると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。「相性抜群」と知った途端、「この人は私のことを完璧に理解してくれるはず」「きっと価値観も合うに違いない」と、無意識のうちに相手への理想を膨らませてしまうのは、確証バイアスの一種です。一度「相性が良い」と思い込むと、相手の良い面ばかりに目が行き、本来なら気づくべき個性や違いを見落としがちになります。過去の私も、MBTI相性が「奇跡的」と言われるほど良い人がいました。その時は「これこそ運命だ！」と舞い上がり、彼の行動を全てMBTIのフィルターを通して解釈。しかし、現実は違いました。彼はただ私に興味がなかっただけ。私の勝手な思い込みと、MBTIという「ラベル」に縛られたコミュニケーションは、結局、彼との距離を縮めるどころか、むしろ遠ざけていたのです。あの時の「もうダメかもしれない…」「なぜ私だけがこんなに空回りするんだろう…」という絶望感は、今でも鮮明に胸に残っています。MBTIは、あくまで「入り口」に過ぎなかったのに、私はそれを「全て」だと錯覚していたのです。
では、どうすればMBTIを単なる診断結果で終わらせず、職場の彼との関係を深めるための強力なツールに変えられるのでしょうか？鍵は、「相性」を「対話のきっかけ」として最大限に活用することです。彼が「性格似てるね」と言ってくれたのは、あなたとの共通点を見つけたい、あるいはもっと知りたいというサインかもしれません。このチャンスを逃さないでください。具体的な質問で会話を広げ、「〇〇タイプって言ってたけど、具体的にどんな時に『自分はまさにこれだな』って感じる？」と彼の内面を探りましょう。また、相手のタイプを「理解のヒント」として活用し、内向型なら一対一の会話を、外向型ならグループでの交流を好む傾向があることを意識したコミュニケーションを心がけます。MBTIの相性が良いと舞い上がるのは、まるでレストランのメニューに「絶品料理」と書かれているのを見て、「最高の食事だ！」と断定してしまうようなもの。確かに魅力的な紹介文ですが、本当に美味しいかどうかは、実際に味わってみなければ分かりません。食材の質、調理法、シェフの腕、そして何より自分の舌で感じて初めて、その料理の真価が分かるように、MBTIは相手という「料理」のメニューです。そこからどんな会話の「調理」をして、どんな「味わい」を引き出すかは、あなたのコミュニケーション次第。メニューを眺めているだけでは、決して満腹にはなれないのです。MBTIは、二人の関係という壮大な旅の「地図」のようなもの。目的地への大まかなルートは示してくれるけれど、実際に道を歩き、景色を楽しみ、予期せぬハプニングを乗り越えて初めて、その旅はあなた自身の、そして二人の物語となります。真の相性とは、診断結果に書かれたラベルではなく、お互いの違いを受け入れ、尊重し、共に経験を積み重ねる過程で育まれる「物語」そのものです。この「心の地図」を片手に、あなた自身の言葉と行動で、彼との「物語」を紡いでいきましょう。きっと、相性診断の数字だけでは測れない、かけがえのない二人の未来が待っているはずです。
